雪の便りと「歳徳神(としとくじん)」のお話

そろそろ私のところでも雪がちらつく程の寒さとなりました。

本日は二十四節気のうち小雪(しょうせつ)

寒気瀬りに結んで雪となる依って名付く。と暦にはあります。

ここから北西に見える半田山は、雪が三度降り白くなれば

ここ梁川にも積雪があると言われていますが、

すでに二度白くなりましたので、いよいよ冬が近いと感じております。

さて、前回触れた「方位神」と呼ばれる暦の神様について、

何回かに分けてお話ししていこうと思います。

暦注に登場する神々は『三国相伝陰陽輨轄簠簋内伝金烏玉兎集』を

典拠としておりますが、内容はとても複雑ですので、

ここでは暦の中での性質を中心に、専門的な事はやめて

分かりやすくお伝えしていきたいと思います。

まずは歳徳神のお話し。恵方の神様‥と言えば

そうです節分が近くなるとよく見かける

スーパーやコンビニでもでも山積みで販売している恵方巻き。

売れ残った廃棄のことでも大問題になってるあれです。

これは海苔巻きや太巻きをただ食べるという

グルメなお祭りでは決してありません。笑

近年は恵方巻きもブーム化して海鮮巻きや肉巻きサラダ巻きなど

何でもありで本来とは異なるものがずらりと並んでおります。

もともとは具材や大きさにもきちんと意味があり、

陰陽五行を背景とした陰陽道の呪術的な行いが基になっています。

一般的には七福神にちなんでとかで七種類の具材をと言われますが、

本来は五行説に則ったもので、

木・火・土・金・水の五行を色に当てはめ青・赤・黄・白・黒。

色を食材に変えて青=菜葉、赤=人参、黄=卵、白=白焼、黒=干瓢

といった具材が古来より伝わっております。

地域によって若干の差はあるにせよ、五種類の具材と色が大事です。

最近では商業的なCMも非常に盛んで

本来の意味はまったく関係ないといった感じになっております。

その年の歳徳神(歳神様、お正月様)の在位する方角を向いて食べる行為は

天地宇宙の原理要素である五行を自身に取り込み

日々の感謝の気持ちをもって、福を祈る。

こういったものは矢張り呪術的なものなので意味もわからず

海鮮巻きや肉巻きではどうにもならないということです。

しっかり五行思想に基づいた海苔巻きをぜひ食べて頂きたいものです。

こうした由来を知る事で節分の風習も一層味わい深くなるように思います。

さて恵方の神様、歳徳神とはどの様なお方なのでしょう?

當山で頒布している暦ではこの様に記載があります。

「牛頭天王の后で八将軍の母、頗梨才女とも櫛稲田姫ともいい、

容顔美麗にして忍辱慈悲の姿。この神は一年を通して万徳を主り、

万事この方角に向かって行うことは大吉となる」とあります。

また『陰陽略書』には「歳徳の所在、萬福在焉」と記され、

その年のもっとも吉となる方角であると説かれています。

歳徳神が在位する方角は毎年変わりますが、

「甲・己の年は東宮の甲、寅と卯の間に在る」

「乙・庚の年は西宮の庚、申と酉の間に在る」など、

干支によって細かく定められています。

ちなみに来年は丙の年なので巳と午の間、南南東となります。

ここで少し余談ですが歳徳神が「南海の竜王の娘」とありますが

実は法華経に登場する八大龍王の一人・娑羯羅龍王の娘、

いわゆる八歳の龍女と同じ系譜にあたります。

空海が招来した清瀧権現もこの龍王の娘とされ、

歳徳神とは同体、あるいは姉妹であるとも伝えられています。

普段は何気なく行っている節分の恵方参りですが、

このように歳徳神の由来や五行の意味に目を向けてみると、

日本の暦文化がいかに深く神仏習合の歴史やかつての陰陽道と

結びついているかを感じられます。

来年の節分には、歳徳神の福徳に思いを寄せつつ、ご自身で

五行にかなった恵方巻きを作ってみるのも良いかもしれません。

合掌

當山で頒布している歳徳神の御神影札(神棚)

(歳徳神、恵比寿神、大黒天神3枚一組1000円で授与しております)