立冬を過ぎて 〜年末年始に向けての暦支度〜
さて、そろそろ年末年始が見えてまいりました。
當山でも、来年に向けた頒布物の準備を少しずつ始めております。
来年は令和八年丙午(ひのえうま)の年。
新しい暦も手元に届きましたので、さっそく中を開いて、
毎年恒例の方位神の在位する方角を確認し、
一年間の必要情報の書き込みを終わらせました。
以前のブログでも触れましたが、
當山は祈祷中心の寺院ということもあり、特に多いのが
家屋の建立・解体・普請・工事などに伴う方位の選定や、
それに関わる方災除け・お祓いのご依頼等です。
方位を見るうえで大切なのは、
その年にどの方位神がどの位置に在るかをまず知ること。
(これは地元のお年寄りなんかはとても詳しい‥。)
これによって、その年全体の吉凶の傾向を判断します。
そして、もう一つ注意しなければならないのが「諸神の遊行日」です。
中でも代表的なのは艮(うしとら)の金神さまや
大将軍、こちらは三年塞がりなんてのもよく耳にします。
巡り金神、天金神、地金神など、その歳によって
在位する方角の数が変動します。今年は六方向にいらっしゃる。
これらは古くからの俗信や民間信仰の中で畏れ敬われてきた神さまです。
金神さまをはじめとした遊行神は、一定の期間ごとに
在位している方角から別の方角へ遊行されます。
その期間中は、もとの在位方位の障りが解けますが、
逆に遊行中の方位は凶となります。
このため、工事や転宅などの時期を選ぶ際には、
暦を丁寧に確認して判断することが大切です。
この暦に登場する神々は、もともと陰陽道の神々です。
陰陽道は中国の陰陽五行説が、仏教や儒教とともに日本に伝わり、
天文・暦数・易などと結びつきながら発展したもの。
自然界の瑞祥や災厄を観察し、人間界の吉凶を占う学問として
古代日本に受け入れられました。
その技術は初めに渡来僧らによって担われていましたが、
やがて朝廷の要請で俗人の陰陽師が現れて7世紀後半には
『三国相伝陰陽輨轄簠簋内伝金烏玉兎集(ほきないでん)』
という書物が著されました。
この中に記されている神々こそが、今も暦に登場する「方位神」たちです。
しかし、明治維新の折に発布された神仏分離令や修験道廃止令、
そして天社禁止令により、陰陽道は迷信とみなされ、
廃止の道を辿りました。
その影響で、今では名前すら知られない神々も多くなりましたが
完全に消えてしまったわけではありません。
暦の中や、各地の信仰の形として今も息づき、
密教・修験道・神道などと長く融合しながら伝わってきた信仰は
静かに今でもしっかり受け継がれて生きております。
年末年始が近づくと、多くの書店でも暦が並びます。
もしお手に取る機会がありましたら、
その中に記された「方位神」や「暦神(れきしん)」を、
少し意識してご覧になってみてください。
きっと、日本という国がいかに多くの神々を敬い、
自然とともに歩んできたかを感じていただけることでしょう。
今後「八将神」をはじめ、暦に登場する神々のことを
少しずつお話していければと思っております。
合掌

